中学生・インター中学年総合国語：

「ここでは、自分で宿題を決めるんだよ」
その言葉が、最初の衝撃でした。

私が初めて蘭塾に足を踏み入れたのは、中学生国語の生徒としてでした。もともと国語が得意であると自負していた私は、塾がなんぼのもんじゃいと思いながら入室しました。しかしいざ参加してみれば、そこは私の知る国語の授業とは全く毛色が違ったのです。

まず、驚くべきはその自由度の高さです。
冒頭の「自分で宿題を決める」というところ、つまり自分のレベルや、その週の忙しさ、モチベーションに合わせて自主的に目標を定められるところ。
自分で目標を決めることは、自由であり、同時に責任でもあります。自分のために、自分が、勉強することを決めるのです。自分には、何が必要なのだろう？何がしたいのだろう？宿題の自由は、「自分から」したいと思うことを考えるための良い機会になりました。

それから、漢字や慣用句などの基礎的な国語の知識に始まり、時事問題のディスカッションや、時には物語、時には説明文になる柔軟度の高い作文まで、学べることの幅が広いところ。
慣用句や故事、百人一首からは日本語の独特な表現、会話で使えるものからいつ使うのか分からないものまで、色々学び、言語の楽しさを知ることができました。
時事問題のディスカッションや作文は、「塾でこんなことまでやるのか」と思わされるような発展的な内容でした。どちらも考える力と伝える力を育ててくれましたし、また他の生徒の視点を知ることで、自分の視野を広げる場にもなりました。
特に作文は、一つのお題に対して皆が書いてくることが全く違い、「そう来たか！」と毎回思わされるので、楽しみにしていました。

そして何といっても、授業のアットホーム感。一つのテーブルを囲んで繰り広げられる授業では、皆がお菓子を持ち寄ったり、課題の合間に雑談があったり、友達同士の勉強会にも思えるような和気あいあいとした空間がありました。
かといって場が乱れるわけではなく、皆話をしながらも課題を進め、真面目な話題も時に混ざったりして、楽しくも実のある授業だと感じていました。当時の私は、唯一「楽しい」と「役に立つ」を両立できる空間であった蘭塾をある種オアシスのようにも思っていました。

高校生・インター高学年　ジャパ・サポート：

高校生クラスでは、また新たな驚きの連続でした。

授業では、中学生から学んでいた漢字や慣用句の勉強はそのままに、時事問題や作文のお題、それにまつわるディスカッションがより本格的になっていきました。授業の半分を占めるそれは、一般的な国語の域を超えてもはや社会の勉強のようにも感じられました。有田先生が何度も何度も伝えてくださった、「生きるために」知っておくこと、疑うことの大切さについて考えることが多くなり、社会問題に対してアンテナを張り、自分でちゃんと調べる力を身に着けることができました。

前述した、一つの机を囲んでお菓子や雑談を交えながらする和気あいあいとした授業スタイルはそのままでしたが、教室をアムステルフェーンからライデンに大きく変えたことで、変わったことがいくつもありました。

まずは先輩の存在です。高校生クラスの行われるライデンの教室では、DPの先輩方にお会いするようになります。海外のインター校ではなかなか味わえない先輩と後輩という繋がりを蘭塾で得ることで、自分の先を行く先輩方が何を考え、何を学び、どのような進路に進んでいくのかをよく見て学ぶことができました。

ライデンの教室ではクラスメートと過ごす時間も長くなります。行き帰りの電車はもちろん、居心地の良いオフィスには思わず居座ってしまいます。珈琲マシンや広々とした机と椅子を自由に使い、ご飯を食べるも、友達と談笑するも、勉強に勤しむも、全てそこですることができるのがライデンの教室です。

また大きかったのは豊富な図書です。幼児から大人、ファンタジーから実用書まで、色々な年齢層に向けた色々なジャンルの本がそこにはあります。沢山の本を読むことは表現を知り、感情を知り、世界を知ることに繋がったと感じています。オランダで日本語の本に手を触れる機会は少ないですが、蘭塾にはそれが山ほどあったのです。

よりアクティブな活動としては、蘭塾祭がありました。
蘭塾祭では、先輩主導の劇で、役を練習したり、小物を作ったり、衣装を決めたりしながら先輩たちやクラスメートと仲を深めることができました。また劇以外の小さな出し物は、自分たちで企画から発表まで進めていくことが必要とされ、元々グループワークが苦手だった私も、共同作業のスキルが大きく伸びました。
前日のリハーサルでは日が暮れるまで練習し、お腹が空いたと言って最寄りのスーパーに追加のお菓子を買いに走ったりもしました。そんな細々とした楽しみが、海外では味わえないと思っていた文化祭などの楽しみをなぞるようで、嬉しかったことを覚えています。

高校生クラスでは国語の基礎やより発展的な社会の勉強に加え、居心地の良い空間やイベントでクラスメイトや先輩との仲を深めたり、本や漫画で色々な世界を知ったりと、第二の学校のような体験ができました。

面接・小論文特訓（受験・編入試験）：

DP進学を目前に突如決まった帰国と、高校編入試験という壁。今までやってきたことが水の泡になるんじゃないかという不安もありました。しかし不安とは裏腹に受験対策では今まで積み上げてきた国語基礎の勉強や、作文を通して得た色々な視点や考え方、自分の意見を強く持つ力を活かすことができました。

高校生クラスでは自由にのびのびと書かせるスタイルだった作文が、受験対策では一転して先生の評価も辛口になり、ちょっと落ち込むこともありました。しかし今までを活かしながら受験の対策をすること、受験の対策をしながら将来に役立つような作文を書くこと、それが今までは無駄ではなかったし、今していることもこれからずっと無駄にはならないんだ、と思うことに繋がりました。

また、「いつもやってきたこと」から徐々に試験向けにやることを変えていくことで、試験当日も「いつもやってきたこと」と同じことをすればいいんだと、変に構えずにリラックスして受け、満足の行く作文を書くことができました。

蘭塾ではどのクラスでも、今の学校に役立つと同時に将来生きるために使えることを身に着けることができました。自分が成長し、触れるものが増えるにつれて、人や情報との代わり方、視野の広げ方を学ぶことに本当に役立ったと感じています。家と学校を行き来する生活の中に新たに増えた「蘭塾」という拠点が、家でも、学校でも届かない部分を体験させ、成長させてくれました。
蘭塾で身に着けた知識、スキルや考え方、得た楽しかったり苦しかったりした経験は数知れませんが、今の私を形成する大きな部分になっています。そしてこれからも、私を成長させる糧になり、私を支える軸になるのだと感じています。
最初は国語を保持するためにと入った塾でしたが、それが蘭塾で良かったと、今では思います。オランダに帰ることがあれば絶対に遊びに行きたい場所の一つです。本当にありがとうございました！